瑕疵担保責任とは

瑕疵担保責任とは

 売買契約において、売買の目的物件に権利又は物の瑕疵があった場合に、売主が買主に対して負う責任を売主の担保責任といいます。

 売買の対象物について隠れた瑕疵が存在した場合、売主は特約が無い限り、民法の規定する瑕疵担保責任を負うことになります。しかし、民法の原則規定に対し、特別法によるいくつかの特則があります。

瑕疵担保責任に関する適用法令の複雑化

ⅰ.売買における売主の瑕疵担保責任は、特約のない限り民法の規定が適用され、損害賠償と契約の解除についての権利を買主が行使できるのは、「事実を知った(瑕疵を発見した)時から1年間」とされています民法第570条、第566条)。

ⅱ.売主が業者で、買主が業者以外の場合には宅建業法40条が適用されます。宅建業法40条が適用される場合には、瑕疵担保責任を負う期間が目的物の引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除いて民法の規定よりも買主に不利となる特約をすると、その特約は無効となります。

ⅲ.商人間の売買では商法第526条が適用され、買主は目的物件を受領したときに遅滞なく瑕疵の有無を検査し、瑕疵の有無にかかわらず、受領後6ヶ月以内に発見し通知を発しなければ瑕疵担保責任を追及できません。ただし、売主が悪意のときはこの規定の適用されません。

ⅳ.売買対象物件が新築物件(完成から1年を経過していない未使用住宅)の「構造耐力上主要な部分または雨水の浸入を防止する部分として政令でさだめるもの(以下、「主要部分等」という。)」の隠れた瑕疵については、品確法が適用され、最低10年間は売主に対し瑕疵担保責任が義務付けされることになり、これを特約によって短縮あるいは責任内容を軽減することは無効となります品確法第95条)。

ⅴ.売主が事業者で、買主が消費者の場合には消費者契約法第8条、10条が適用され、事業者が瑕疵担保責任を一切負わない旨の特約は原則として無効とされます。また、瑕疵担保に関し、民法の規定よりも消費者にとって信義誠実の原則の観点から一方的に不利益な特約をすると無効となります。

消費者契約の意義

 消費者契約法(平成12年5月12日公布(第61号)され、平成13年4月1日から施行された)は、消費者契約を適用対象としており、「消費者契約」とは、「消費者」と「事業者」との間で締結される契約のことをいう(法第2条第3項)。

 従って、消費者同士の契約、事業者同士の契約は適用対象にならない。しかし、消費者と事業者との間の契約である限り、あらゆる業種に適用され、ただ一つ適用されないのは労働契約だけであるとされている。

 「消費者」とは、事業者でもなく、事業のためにでもなく契約の当事者となる個人のことをいう(同条第1項)。

 「事業者」とは、法人その他の団体および事業として、また事業のために契約の当事者となる場合における個人のことをいう(同条第2項)。従って、宅建業者は、株式会社、有限会社などの法人業者はもちろん、個人業者もすべて事業者に該当することになる。

 この「事業者」の概念は、世間一般でいうそれより広い。「事業」というのは、一定の目的をもってなされる同種の行為の反復継続をいうので、たとえばアパートや貸家を経営する個人もこの法律では事業者に該当することになります。

トラブルを未然に防ぎ、回避するための方法論

1.売主、買主がその旨を「明確に認識して」、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約が「明確に合意されている」ことが必要条件となります。

2.重要事項の定義は、「買主の判断に影響を与えるかどうか」。瑕疵に当たらなくても、「重要事項」には当たる場合があります。

3.「権利の瑕疵」は重いが、「物理的瑕疵」は限定的というのが裁判所の考え方です。

ⅰ.物の瑕疵
売買の目的物件に隠れた瑕疵があった場合(民法第570条)は、「善意の買主」のみが、損害賠償請求、契約の目的が達せられないときに契約解除をすることができます。
「権利行使期間」は、買主が事実を知った時から1年です。

ⅱ.担保責任を負わない旨の特約
売主が担保責任を負わない旨の特約をした場合、民法上は有効である。ただし、その場合でも売主は次の者については免責されません(民法第572条)。

①売主が知っていながら買主に告げなかった事実
②売主が自ら第三者のために設定し、または譲渡した権利

4.「ここまでは調べましたが、これ以上の専門的調査は未了です。」とはっきり書くのが、トラブルを未然に防ぐノウハウとなります。

5.「告知書」、「物件状況確認書」は大切であり、取得する必要があります。

6.消費者契約法では、「売主の3ヵ月間での瑕疵担保責任免責」は、判例で無効となっています。6ヶ月、12ヶ月の期間でも瑕疵担保責任免責条項は、裁判所に無効とされるリスクがあります。

「瑕疵担保免責条項」を入れる際の3重要項目を確認点検するようにしましょう。

Ⅰ.瑕疵担保免責条項を入れてもいい場面ですか?

Ⅱ.買主の権利行使に時間的制約がありますか?

Ⅲ.「容認事項」や「特約」で隠れた瑕疵ではなく「表に出た瑕疵」にできていますか?
 ※「容認事項」という表現は、素晴らしい!!

7.築40年の木造住宅で、売主おおよび元付仲介業者の意識は、「雨漏り、シロアリ被害はあって当たり前でしょう。」は、通りません。その事を明示して説明し、値引き額に反映させて「それは隠れたる瑕疵には当たらない。」と明記するのがノウハウとなります。
 ※詰まる所は、値引き額、値段とのバランス論です。

8.120年ぶりの民法の債権法の改正作業では、「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」という表現に変わる予定だそうです。目的物が契約の内容に合致しているかどうかを問われています。それなりに適合したものを渡すのが当たり前の時代となっています。

9.裁判所の考え方は、「下から覗き込めばわかる火事の跡」は、仲介業者に責任と認定します。両手仲介は、売主サイドに仲介業者が片寄るから責任がより重いという判断が示されています。

10.補修工事に万が一、100万円以上の費用が掛かる場合に、「白紙解約条項」を入れるようにした方がよいでしょう。損害賠償請求などで売主に余計な経済的負担を生じさせないためです。